振り返ればオアシス!

桜田紋吉(もちろん仮名)です。特に何のテーマも無いブログ《ノンポリブログ》です。過去のエピソードを書く時は事実を元にして右往左往しながら書いているので100%ノンフィクションかと言われたら胸を張って「知らん!」と答えるつもりです。

辞めるってよ・・・!【後編】

お疲れ様です。は?桜田紋吉(もちろん仮名)ですけど。今日も書きますよ。






では・・・


さっそく前回の続きを・・・


前回のブログ→辞めるってよ・・・!【前編】 - 振り返ればオアシス!








退職するイズピンの代わりに新しい事務員を募集することになった。(俺が働いている職場での話ね)


シマセンの説明によると


いきなり職場に現れ、履歴書を直接渡しに来た謎の50歳女性【新田さん(もちろん仮名)】が採用決定になったというが・・・







とりあえずシマセンの話に俺は耳を傾けた。






シマセン「俺はさぁー・・・難しい資格を取得しててハキハキと喋る20代後半の人がいたからさぁー・・・その人を推そうと決めてたんだけどねぇ。」


桜田紋吉「何で推さなかったんですか?」


シマセン「いやいや、推すも何も・・・面接が終わって部屋に面接官(社長・副社長A・副社長B・シマセン)だけになった瞬間に社長が「じゃあ【新田さん】を採用ってことで」とか言い出したんだよ!」


桜田紋吉「うわぁ・・・。」


シマセン「で副社長Aと副社長Bも「そうですね!」とか言っちゃってさ!」


桜田紋吉「うわぁ・・・。」


シマセン「明らかに俺が推そうとしてた人が履歴書の内容も面接での発言も優秀な感じだったんだよ!絶対に社長達にも好印象だったはずなのに!」


桜田紋吉「じゃあ、採用された【新田さん】の履歴書とか面接の雰囲気とかはどうだったんですか?」


シマセン「・・・正直、覚えてない。覚えてないぐらい無難で普通だった。特に「おっ!」と思うポイントは無かったね。」


桜田紋吉「でも採用された。ってことは?」


シマセン「だろ?変だろ?」


桜田紋吉「・・・ベタなコネ入社でしょ。こんな田舎の小さな職場では珍しくないっちゃないですけどね。」


シマセン「まぁね。俺もすぐ気付いたよ。『完全なコネだよなぁー・・・俺抜きで3人の面接官は口裏を合わせてんだろうなぁ』って。」


桜田紋吉「どんなコネなんでしょうねぇ。3人の中の誰かの知り合いに頼まれたとか?・・・まぁ結果は変わらないから事実を知ったとしても関係無いんですが。」


シマセン「俺も『誰のコネだろう?』って3人の顔色を伺ってたんだよ。伺っている時にハッとしたんだけどさ・・・」


桜田紋吉「・・・ハッとした???」


シマセン「似てたね。すんごい似てた。」


桜田紋吉「・・・ん???似てた???」














シマセン「新田さんと副社長Aの顔が激似だったな!」


桜田紋吉「・・・えっ!!!」


シマセン「似てたってレベルじゃない!!!副社長Aを女装させたら新田さん!!!」


桜田紋吉「マジ!?副社長Aの親戚ってことですか・・・」


シマセン「親戚っていうかさぁー・・・」










シマセン「ありゃ【実の娘】だな!親戚どころか娘だな!」


桜田紋吉「げっ!!!」


シマセン「間違いないと思うなぁ。」


桜田紋吉「確かに年齢差もちょうど親子ぐらいの差はありますけど・・・」


シマセン「間違いないって。激似だから。」


桜田紋吉「いやぁー・・・わざわざ我が子を入れますかね?入社してもメリット無いと思いますけど。」


シマセン「でも間違いないって!何回も言ってるだろ!激似だって!」


桜田紋吉「・・・いや、秒速で『親子』っていう情報がバレて職場で気まずい感じになるのは誰だって分かるじゃないですか?それを分かった上で入社しますかね?」


シマセン「理由は何だろうが親子だって!間違いなく副社長Aの娘だ!新田さんは!」


桜田紋吉「・・・そうですかねぇ?見てないから何とも言えませんけど。」


シマセン「絶対に娘だから!!!」











『絶対に娘だ!』と言い張るシマセンと


『大きな職場なら分かるけど小さい職場で本人が気まずい思いをするのが目に見えているのにわざわざ入社して来ねぇだろ』という疑いの俺。(新田さんの顔を見てもいないのに疑うという性格の悪さ)


言い張るシマセンと疑う俺・・・。


疑い続ける俺にシマセンは珍しくイライラし始めていた。


そして・・・








俺の余計な一言がシマセンの怒りの導火線に火をつけてしまった・・・!!!









桜田紋吉「親子だったら名字が同じはずじゃないですか?」


シマセン「・・・結婚してたら名字違うだろうがっっ!!!!!」(ガチギレ)


桜田紋吉「あっ・・・すいません。」









珍しくシマセンがキレた。


そりゃそうだ。『結婚してたら名字が違う』って当たり前のことに気が付かなかった俺が悪い。(今の時代は夫婦別姓もあるっちゃあるけど)


明らかな俺の凡ミス。


一瞬だけ『は?何をキレてんだコイツ?』と逆ギレしそうになったが(最低)


即座に謝り直した。









桜田紋吉「すいません。有り得ないと思い込んでいましたので。」


シマセン「・・・いや、確かに似ているだけじゃ少し弱いよな。」


桜田紋吉「ですね・・・。」


シマセン「・・・あっ!そうだ!」


桜田紋吉「・・・ん?」


シマセン「副社長Aの家の近くに俺の飲み仲間が住んでるわ!ちょっと電話してくる!」









シマセンは携帯をポケットから取り出しながら小走りでどっか行ってしまった。


電話で話をしているところを誰にも見られたくないタイプなんだろう。俺もそっちタイプだ。人が周りにいるのに平然と電話する奴の気が知れない。


って、そんなことはどうでもいい。


それから数分後・・・


シマセンが戻ってきた。









シマセン「電話してきた!」


桜田紋吉「どうでした?」


シマセン「いきなり聞くのも変だから話の流れで適当な感じで『ウチの副社長が近くに住んでるだろ?娘さんって結婚して名字は何に変わったんだっけ?』って聞いた!」


桜田紋吉「おっ!で返答は???」


シマセン「・・・【新田】だってさ!」


桜田紋吉「・・・うわぁ。」


シマセン「これで間違いないだろ?」


桜田紋吉「・・・はい。間違いないです。」


シマセン「ってことで新入社員は副社長Aの娘さんの【新田さん】になりました!・・・ガッカリしちゃいけないんだろうけど・・・ガッカリしちゃうよなぁ。」








シマセンは落胆していた。


もちろん俺も落胆した。


田舎の小さい職場では普通にあるコネ入社だとは思うが『やっと同年代か年下と話せる!』と期待していた分ショックは大きかった。


よくよく考えると


こんなにも『誰も得しないこと』って珍しくないか?







新田さんが副社長Aの娘さんっていう事実は絶対に職場では一瞬でバレるだろうから従業員全員が気まずい感じで接する状態になりストレスが溜まるはずだ。


言いたいことも言えないような反町ポイズン的なことになる。


そうなったら


社長も副社長Bも気まずいだろうし


副社長Aも自分の娘だけに甘く接したら他の従業員から責められるというリスクを背負うことになる。


そして


何よりも新田さん本人が一番辛い思いをすることになるはず。最初から全員に気を使われ、心の距離が縮まることも皆無だろう。孤立したり孤独を感じる場面が多そうな気がする。すでにかわいそうだ。


しかも


わざわざハローワークに求人を出したのに結局はハローワーク無関係で会社役員の娘を採用したということが噂で広がったら会社の評判も危うい。田舎での噂が広がるスピードは鬼のように速いぞ。(ハローワークに求人を出す前にコネで入社すりゃよかったのに)


その噂が今回面接を受けに来た女性の誰かにまで広がったら、その女性はブチギレるだろうし。『必死で履歴書作成して都合つけて面接まで行ったのに出来レースとは何事じゃ!!!』と怒り心頭だろう。






・・・こりゃ本当に誰1人として得しない。


例えば『新田さんが何十社も入社試験を受けたのに落ちまくってるから最終的にコネで入社します』とかだったら少しは理解できるが


現在は別の会社で働いていて入社が決まったら退職してコッチに来るらしいので無職で金欠ってわけでもなさそうだ。


それなのに何故だろう?周りに気を使われるのを承知で覚悟してまでもコッチで働きたかったのか謎である。一流企業でもないのに。







・・・と俺が何度も疑問を感じたところで新田さんが入社してくるのは確定済みだ。


シマセンと俺との間で『新田さんが副社長Aの娘であることは内緒にしておこう。どうせバレるけど!』と決めていたので他の従業員の前では新田さんが入社してくるまで新入社員の採用の話題は一切しないでいた。



我が社のモンスター【元・部長】が朝礼の時に


シマセン・俺・イズピン・イズピンじゃない方の事務員さんの前でいきなり・・・








「入社してくる事務員って副社長Aの娘さんなんだろう?」


とカマしてきた・・・。


俺は『えっ!何で知ってんだ?』と驚いたが


俺以外の全員が「そうそう」と頷いており


「内緒な!」と言っていたシマセンが実は全員に報告していたのは朝礼の空気で察した。さすがシマセン。全員に「内緒の話なんですけどぉー・・・」と言いながら全部を伝えている場面が目に浮かぶ。それこそがシマセンだ。







【元・部長】の発言の後にイズピンが喋り始めた。


「私も仕事を教えなきゃなんないから気を使うわねぇー・・・。社長や副社長達が何も話さないなら私達も何も知らない感じで接した方がラクなんじゃない?」


なるほど。イズピンにしては良いこと言う。


俺以外の従業員もイズピンの意見に同調し『上から何も説明が無かったら何も知らない素振りで接する』ということが決まった。









それから数日後・・・


珍しく社長・副社長A・副社長Bが朝から職場に顔を出していた。


どうやら明日から新田さんが出勤するらしく『明日から新人さんが来るので皆でフォローしてやってね的な話』をしにやって来たらしい。


そこで新田さんが副社長Aの娘だということを社長達が皆の前で話すのか話さないのか・・・


さて、どうなるのか・・・。


そんなこんなで朝礼の時間になった。








社長「皆さん!おはようございます!今日は私と副社長達から話があります!」


俺は『おっ!ついに娘だと言うのか?』と謎の期待をした。(言ったら言ったで盛り上がりそうじゃん?)







結局は『明日から新入社員が入るから怪我させないように』という話だった。


事務員の仕事内容でどうやって怪我すんのか不明だったが


要するに『(誰よりも)優しくしろよ』ってことだろう。


わざわざ社長達はこれだけの話の為に来たのか。なんじゃこれ。


・・・と思っていたら











元・部長「副社長!娘さんには安心して働きに来て下さいと伝えといて下さい!」














全員「!!!!!!」











そこにいる全員が一瞬にして固まった。


さすが【元・部長】だ。数日前に皆で話した内容も今の空気もお構い無し。


むしろ『ってか俺、今めっちゃ良いこと言ったよね?』と言わんばかりのキラキラした表情を彼は浮かべていた。(あんた幸せ者だろ)







副社長Aは「はははっ。。。」と苦笑いを作るしかなかったようで何も喋らなかった。


こんな凄い変な空気って滅多に経験ないだろってぐらいの空気が漂い・・・


社長の「・・・まぁまぁまぁ。とっ・・・とりあえず皆さんヨロシクね!」の挨拶で朝礼は終了した。(まぁまぁまぁってなんだよ)







そして翌日・・・


新入社員の新田さんがやって来た。(女装した副社長Aかと思った)


緊張した面持ちで「新田です。今日からヨロシクお願いします。」と皆の前で挨拶をされた。


全員が「ヨロシクお願いしまーす」と言った後に職場のモンスター【元・部長】が変なテンションで


「いつもお父様にはお世話になってます!」


さっそく先制パンチを繰り出していた。







新田さんは動揺したような表情で「・・・すっすいません。。。」と小声で言った。(さっそく謝ったのがウケる)


多分、新田さんは誰も自分の父親が副社長だとは知っていないと思って今日の日を迎えたのだろう。


「お父さん!私が娘だってことは内緒にしといてよね!」っていう会話も副社長との間で取り交わされていたのかもしれない。


まさか入社して数秒で「お父様には~~」の言葉が飛んで来るとは夢にも思わなかっただろう。


・・・ふっふっふっ。








新田さんよぉー・・・もう分かっただろ?


ここは変な職場だぜ?


覚悟して入社したんだろ?











とりあえず、ようこそ新田さん。
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(新田さんは本当に副社長の娘なのか?と疑いたくなるぐらい静かで穏やかな女性だった。もし、うるさくてイズピン第2号みたいな感じだったら地獄だったが大丈夫そう)