振り返ればオアシス!

桜田紋吉(もちろん仮名)です。特に何のテーマも無いブログ《ノンポリブログ》です。過去のエピソードを書く時は事実を元にして右往左往しながら書いているので100%ノンフィクションかと言われたら胸を張って「知らん!」と答えるつもりです。

バスと経堂と幼なじみ。

どうも!こんにちは。桜田紋吉(もちろん仮名)は私だ。今日もよろしくです。







最近の口癖は「字が下手なくせに文房具にこだわってんじゃねぇよ」です。


誰のことかと言いますと・・・シマセンです。(職場の先輩。驚くほど優しい人。このブログではお馴染みの人物だよ)


シマセンはびっくりするぐらい字が下手です。マジで『利き手とは逆の手で書いてんのか?』と最初は思いました。


彼は字が『汚い』ではなくて『下手』なんですよ。時間掛けてゆっくり書いても激下手。俺も下手だけどレベルが違う。レベチで異次元。俺の人生で出会った字の中でも第一位です。


しかし


さすがに本人も気にしているようなので字のことを指摘するのは野暮。文字の解読を出来るようにコッチ側が努力すればいいだけの話です。(どんな努力だよ)


が!


当のシマセンは「このボールペンは書きやすい!」とか「手にしっくりくるぞ!」とか「やっぱこのシャーペンが一番!」などなど・・・


うるせぇー・・・・。


まず、そこじゃねぇだろー・・・・。


しかも


一丁前に文房具をコレクションすんなー・・・。


高価な文房具を集めてんじゃねぇー・・・。


でもまぁー・・・・誰にも迷惑掛けてないから構わないけどって感じー・・・。










・・・・はい。では本題に行こか。


ってか前回の続き書いちゃう!


前回のブログ↓
やっと何かが始まりそうな予感がした日。 - 振り返ればオアシス!











東京で暮らすことを決心した俺は


住まい探しを行う為に東京へ向かっていた。


住まい探しは1日で済ませて


本格的な上京はまた後日に行う予定だ。


全財産『24万円』の俺は節約の為に鈍行列車へと飛び乗った。(カッコ良く言ったが普通に乗った)







到着までのスケジュールはこんな感じ↓


昼に鈍行列車で田舎を出発・・・


夕方に高速バス(夜行バス)へ乗り込んで・・・


で次の日の早朝に東京(新宿)到着予定。


そして夜になったら


また高速バス(夜行バス)からの鈍行列車で田舎へ帰るというプランだ。








『長旅になるが節約節約!』と自分に言い聞かせた。


鈍行列車がやっと高速バス乗り場へ着き


人生初の『高速バス(夜行バス)』へと乗り込んだ。








1番安い席を購入していたので


俺の席は『1番後ろの真ん中』である。


これがなかなかの地獄だった。


眠くても左右に人がいるので(マジで真横に人がいる)寄っ掛かることは不可能。良い姿勢のまま過ごさないといけない。つまり眠れない。


夜になると消灯されカーテンを閉めるのがルールなので本も読めない。


消灯後の車内は真っ暗。携帯電話やゲーム機をイジると画面から光を発するので他のお客さんの迷惑になる。


だったらイヤホン付けて音楽でも聴こうかと考えたが音漏れして迷惑になるのも嫌だなと思い断念。


よって


東京に着くまでの12時間ほど俺は『良い姿勢のまま目を閉じて時間が過ぎるのを待つ』という


修行僧のような時間を過ごすことになった。これぞ苦行だ。


二時間に一回のペースでバスがサービスエリアに停まりトイレ休憩の時間が与えられるのだが


その度に俺は小腹を満たす為に食料を買っていた。












それで


東京に近付いてきた辺りで俺は思った・・・










『あれ?毎回毎回サービスエリアで買い物してるってことは・・・飛行機に乗った方が安かったんじゃね?』と。


格安航空券よりも数千円安い高速バスチケットを購入して費用を節約していたつもりだったが


眠れない→起きてるから腹は減るし喉も渇く→サービスエリアで食料と飲み物を購入する→腹が満たされ眠気が襲うが良い姿勢のまま過ごさないといけないので眠れない→また腹が減る→買う


これの繰り返しだ。明らかに数千円分は買い物している。











で、また思う・・・


『帰りのチケットもすでに購入済み・・・もちろん1番安いやつ・・・また地獄じゃねぇか!』と。








まだ行きのバスの中なのに帰りの辛さを想像して落ち込む俺。


しかもバスの中が暑い。地味に暑い。大人数が閉じ込められているわけだから暑い。じっとりと汗をかいている。


風呂にも入れないから身体はベタベタ、歯も磨けないので口の中はネチョネチョ、近くに座っているお客さんからは加齢臭が漂ってきている。


地獄。まさに地獄だ。









心も体もクタクタになり


やっとこさ東京(新宿)へバスが到着した。









早朝の大都会に放たれた俺。


4時だったか5時だったか詳しくは覚えていないが


人が全くいない大都会で俺がまず行った場所は『吉野家』だ。


腹が減っていた・・・のではない。








歯を磨きたい!顔を洗いたい!・・・という気持ちが爆発していたので吉野家の中のトイレの洗面台で済ませようと考えたからである。


さすがに何も注文しないで洗面台だけ使用するのは人としてダメだろうなと思ったので


洗面台に向かう前に牛丼の並盛だけを注文して食べることにした。


大都会の新宿というのに客は俺だけ。店員も二人だけ。どっちの店員も眠そうだった。


キラキラとしているはずの大都会も早朝だと街自体がまだまだ寝ている。


街全体が早朝の都会特有の何とも言えない臭いで包まれており


その臭いと雰囲気が妙に生々しくて


俺を切ない気分にさせた。








『これから俺は大丈夫なのか・・・?』









ついに・・・ここまできて・・・


とうとう不安な気持ちになった俺。


不安な気持ちを誤魔化すかのごとく牛丼をガツガツと食べた。








食べ終わり、会計を済ませ


店員に「トイレ借ります」とだけ告げ


トイレに入り・・・洗面台の前に立ち・・・


家から持ってきた歯ブラシで歯を磨き始めた。


歯を磨き・・・その後は洗顔だ。


洗顔フォームは持ってきていなかった。


それでも泡を顔に塗って洗いたかったので


備え付けのハンドソープ(緑色の液体だった)を顔に塗り洗顔した。


洗顔した自分の顔を鏡で見て俺は思った・・・










『何も注文せずに洗面台を使うのは人としてダメだと思ったけど・・・』


『そもそも吉野家のトイレで歯磨きと洗顔している時点で俺は人としてダメだよな・・・』


・・・当時の俺は自分に引いた。








オッサンになった今なら『吉野家で歯磨きまで済ます当時の俺スゲェ!』と思えるのだが


当時は洗顔を終えた自分の顔が何とも頼りなくて


『俺・・・何やってんだろ・・・』の気持ちが強かった。


よくよく考えると『トイレで歯磨き&洗顔をする客』なんて大都会ならいてもそこまで不思議じゃないのに。









吉野家を出た俺は久本(もちろん仮名)に電話することにした。


数日前に「◯日後に東京へ住む所を探しに行くの決定した!到着したら会おう!」と約束していたのだ。


久本から「その日(俺が東京にやって来る日)はバイトが朝の6時に終わるから、その後だったら時間がある」と言われていた俺は


ケータイで時間を確認した。当時はまだガラケーだった。


時刻は6時を過ぎている。


街を見渡すと人の数が多くなりだしていた。


久本に電話した。










桜田「もしもーし。」


久本「もしもし?さっきバイト終わったよー。今どこにおる?」


桜田「お疲れー。新宿におるよ。」


久本「新宿?もう新宿?早かね。」


桜田「いや、バスやけん。到着した場所が新宿やったってだけさ。」


久本「そうかそうか。空港から来たってワケじゃなかったね。」


桜田「そうそう。もう久本の家の最寄りの駅まで行っていい感じ?」


久本「オッケーばい。新宿におるとなら小田急に乗って『キョウドウ』で降りて。」


桜田小田急の・・・キョウドウね・・・分かった。」(聞き慣れない言葉なので忘れないようにゆっくりと自分に言い聞かせるように話した)


久本「キョウドウに着いたら電話して。もう今から駅に向かいよくわ。」


桜田「分かった。ありがとう。急いで駅に行くわー。」








不安な気持ちに押し潰されそうだったが


久本の声と指示で少し精神的に回復した。








新宿駅に到着し(新宿駅には秒で着いた)


小田急の改札口を探して向かう。


すでにSuicaは出回っていたが田舎から来た俺には『スイカ?は?』の状態。


ちゃんと田舎者らしく切符売り場のパネルで『キョウドウ』を探す・・・







・・・キョウドウ?


えぇー・・・・キョウドウ???


キョウドウって無くない???









マジで探せなかった。


何度もパネルを見たがキョウドウは無い。


何回も言うが当時はガラケーだ。スマホでサクサクと検索する時代ではない。


仕方がないので久本に再び電話した。







桜田「もしもーし。」


久本「えっ!もう着いた?」


桜田「いやいや。着いとらん。ってか『キョウドウ』て無いとけど。」


久本「・・・いや、あるやろ。」


桜田「無いて。『キョウドウ』は無いて。」


久本「・・・・は?・・・・あぁ!『キョウドウ』は『ケイドウ』て漢字で書くよ!」


桜田「・・・『ケイドウ』?・・・あぁ!あったあった!分かったわ!サンキュー。」


久本「分かった?じゃあ着いたら連絡してねー。」









まさかの【経堂】だった。


・・・いや、読めるわけなくない?


【経堂】でキョウドウとは難しくない?


【経堂】はケイドウでしょ?田舎者を騙すトラップ仕掛けてくんな。









なんだかんだで電車に乗り込んだ。


満員電車というわけではなかったが


たくさんの人が乗っている。







経堂に着いた。


駅にはたくさんの人で溢れている。


学生も社会人も高齢者も・・・色んな人で溢れている。


『名前を聞いたことすらない駅でも人が溢れるんだな。これが東京なんだろうな。』


東京の常識に圧倒されながら駅を出た。







そして久本に電話した。







桜田「もしもーし。着いたよ。」


久本「着いた?俺も駅まで来たよ。」


桜田「マジで?えっと・・・今は北口の方におるよ。人混みの中から電話しよるよ。」


久本「えっ?北口?オレも北口におるけど!」


桜田「北口におると?」








周りを見渡す俺・・・。


とにかく人が多いので見つけるのが大変だ。









・・・・あっ!!!


久本だ。久本がいた。


久本はキョロキョロと俺を探している。


元々、久本は痩せている奴ではあったが


俺の想像以上にガリガリに痩せ細っていた。








幼稚園の頃からずっと一緒に過ごしてきた仲間の一人が久本だ。


『見慣れた奴』が『見慣れない街』にいる。


しかも『見慣れない街』は大都会・東京だ。


本当に不思議な感じだ。







まだ久本は俺をキョロキョロと探している。


ガリガリに痩せた身体から出ている雰囲気からして『大都会で苦労している』のが充分に感じ取れた。


俺の方から久本に近付いていった。










桜田「・・・おい!久しぶり!!!」


久本「うわっ!びっくりした!・・・本当に来たな(笑)」


桜田「・・・来てしまったよね(笑)」


久本「とりあえず俺ん家に行こか。」


桜田「サンキュー。家で一旦落ち着きたいわ。」







久本が苦労しているのは話さなくても分かった。雰囲気で分かるのだ。


それが幼なじみってもん。








『俺もこれから苦労するんだろうな。』


数ヵ月後の俺の姿が・・・


今の久本ってわけだ。







苦労している久本は


『ようこそ!東京へ!』というテンションには間違ってもならない。


地元にいた頃より何倍もローテンションだ。


そんな久本を見て


『俺は大変な選択をしているのかもしれない』


と再び不安に包み込まれる俺。








久本と俺は久本が住んでいるアパートへと歩き始めた。


15分程で着くらしい。


まだまだ色々と不安定な田舎者の若者二人が


都会の道をゆっくりと歩いている。









その足取りは


『本当にこの道で合っているのか?』と


人生という道のりを迷いながらも


『でも前には進まないといけない』と


日々を泥臭く生きている姿を表しているようだった。
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(後に久本は俺の結婚式で友人代表としてスピーチをすることになる)