振り返ればオアシス!

桜田紋吉(もちろん仮名)です。特に何のテーマも無いブログ《ノンポリブログ》です。過去のエピソードを書く時は事実を元にして右往左往しながら書いているので100%ノンフィクションかと言われたら胸を張って「知らん!」と答えるつもりです。

ある男の変化と恋

お疲れ様です。桜田紋吉です。今日もヨロシクお願いします。

 

 

 

 

では本題へ。

 

 

 

 

 

 

約20年前のこと。

 

当時、落ちこぼれ大学生の俺は

 

深夜のコンビニでアルバイトをしていた。

 

 

 

 

コンビニには色んな客が来店する。

 

もちろん

 

ほとんどの客は普通の人だが

 

たまにパンチの効いた人が来店する。

 

 

 

 

今日は俺の記憶に強烈に残っている客を紹介したい。

 

その客の年齢は20歳前後だと思う。

 

性別は男。

 

当時の俺の年齢とそこまで離れていない感じだった。

 

 

 

その男は

 

いつも黒のワゴンRに乗って登場する。

 

フロントガラス付近に『白いモフモフ』を設置したワゴンRだった。f:id:oasis2018:20240206172259j:image

(こんなイメージ)

 

 

 

 

 

いっつも爆音で音楽を流しながら駐車場に入ってくる。

 

 

いっつも『露出が多めの服を着た厚化粧ギャル』と一緒に来店する。彼女だろう。

 

 

絶対に車のエンジンを切らない。爆音を垂れ流したまま車を停めて来店する。

 

 

駐車場の白線内にキレイに車を駐車しない。他の客の車なんか気にせずワガママに駐車する。

 

 

彼女の肩に手を回して来店する。さすがにイラッとする。

 

 

 

 

 

そのカップルがレジにやってきて

 

男が「タバコ!いつもの!」と大声で俺に言った。

 

もちろん男の愛用のタバコなんて俺が知るわけがないので

 

「いつもの・・・?」と困惑してると

 

「おめぇ覚えてないのかよ!いつも買い物しに来てやってんだろうが!」とキレられた。

 

 

 

 

顔面に熱々の肉まんを投げつけようかと思ったが我慢。

 

すると横にいる彼女が

 

「もう〜!やめなよぉぉ♪」と謎のノロケ。

 

最高なクソ茶番を見せつけられた。

 

 

 

 

 

そして翌週・・・

 

俺が駐車場のゴミ拾いをしていると

 

また爆音ワゴンRが登場した。

 

俺はいつも『どんな音楽を聴いてんだ?』と気になっていた。

 

爆音ではあるが

 

さすがに車の窓や扉を開けないと

 

はっきりとは音楽が聴こえず曲名までは分からなかったからだ。

 

 

 

その日は

 

たまたま駐車場に俺がいたので

 

カップルが車から降りる時に音楽を聴けるチャンスだと思いワゴンRを凝視していた。(エンジン切らないから音楽は垂れ流し)

 

カップルが車から降りた。

 

・・・なんか英語のヒップホップが流れていた。爆音で。

 

 

 

 

確かによく見ると

 

いつも男はラッパーを意識したような服装をしている。

 

キャップを斜めに被り、ダボダボの服を着てた。

 

絶対に東京生まれじゃないのに「俺は東京生まれ、ヒップホップ育ち」とか言い出しそうな風貌だ。

 

 

 

その男はとにかく偉そうだった。いつも。

 

偉そうな態度をする男に彼女が「もう〜♪」みたいなリアクションを毎回しているのが余計に俺をイラつかせていた。

 

 

 

 

ある日・・・

 

その偉そうな男が1人で店内に入ってきた。

 

いつも彼女と一緒だったのに1人だ。

 

しかも

 

外に停めてあるワゴンRはエンジンをちゃんと切って白線内にしっかりと駐車してある。

 

レジでも「タバコの◯◯を1つ」と普通に話していて全く偉そうな態度ではない。

 

男が帰り際に車のエンジンをかけた時も爆音の音楽は流れてないようだった。

 

 

 

 

・・・なるほど。

 

彼女がいる時だけスイッチが入るわけね。

 

彼女に対してのアピールってわけか。

 

いつものヒップホップ精神はどこいった?

 

まぁ俺には関係ないか。

 

 

 

 

そして

 

それから毎回、男は1人で普通の態度で来店するようになった。

 

風貌も

 

『東京生まれ、ヒップホップ育ち』ではなく

 

『田舎生まれ、農家育ち』の方に変化していった。

 

 

 

 

 

俺は思った。

 

『彼女と別れたな』って。

 

元気も無さそうだった。

 

振られたのかもしれない。

 

ワゴンRを見てみると

 

『白いモフモフ』も取り外されていた。

 

 

 

 

 

 

それから1か月ほど経っただろうか・・・

 

いつものように

 

駐車場でゴミ拾いをしていたら

 

もはや見慣れた黒のワゴンRが入ってきた。

 

もちろん『白いモフモフ』は無い。

 

 

 

 

 

が!

 

助手席に女の子がいた!!!

 

しかも

 

あの『露出が多めの服を着た厚化粧ギャル』ではない!

 

『THE・普通の女の子』が助手席にいる!

 

短大で保育園の先生になる為の勉強してますって感じの女の子だ!

 

 

 

 

俺は心配になった。

 

『そんな普通の女の子はイキってる男は嫌いだけど大丈夫か?』って。

 

 

 

 

 

・・・俺の心配は無駄だったようだ。

 

ワゴンRは爆音の音楽を流してはいなかったし、ちゃんと白線内に駐車していた。

 

もちろんエンジンも切って。

 

 

 

 

『ほぉ〜!成長しやがったな!』と微笑ましく見ていると

 

なんか初々しい雰囲気で2人が車から降りてきた。

 

その瞬間に

 

俺は察したね。

 

 

 

 

『まだ付き合ってないな』って。

 

カップルになる寸前って感じ。

 

だから

 

男は女の子にめちゃくちゃ丁寧に接していたし、悪態アピールなんか1ミリもしていなかった。

 

そりゃそうだ。普通の女の子は悪態をつく男性が嫌いだと思うし。ダサいから。

 

・・・でも、なんかいいよね。

 

恋だね。甘酸っぱいよ。

 

 

 

 

そのまま俺は駐車場でゴミ拾いを続けた。

 

すると

 

買い物を済ませた男が

 

先に車に戻ってきた。

 

女の子はトイレに行っているみたいだ。

 

女の子が戻ってくる前に

 

男は車のエンジンをかけた。

 

もちろん爆音の音楽は流れていない。

 

 

 

 

少し遅れて女の子が車の方へやってきた。

 

助手席の扉を女の子が開けた。

 

その瞬間・・・

 

 

 

 

 

微かに音楽が聴こえた。

 

もちろん爆音ではない。

 

心地良い音量で音楽が流れてきた。

 

『え?まさか!英語のヒップホップじゃねぇよな!?』

 

と心配になった俺は

 

耳を集中させ

 

どんな曲なのか聴いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恋しちゃったんだ〜♪たぶん〜♪気づいてないでしょ〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

・・・いや、まさかの『CHE.R.RY』!!!

 

驚いた。

 

この前まで英語のヒップホップを爆音で流していたヤツが

 

YUIの『CHE.R.RY』を流している。心地良い音量で。

 

 

 

 

 

 

・・・ふふふ。

 

『たぶん気づいてないでしょ〜♪』ってか?

 

バカ野郎。俺は気づいてるよ。

 

おまえが恋してるってこと。

 

 

 

 

走り去る黒のワゴンRの背中に

 

俺は

 

小さく「頑張れよ」と呟いた。f:id:oasis2018:20240207125855j:image

(指先で送るキミへのメッセージ)